社会保険加入freeeを迅速に使いこなすためのマニュアル

投稿日:2017.05.21|カテゴリー: IT・クラウド

freee株式会社様が、平成29年5月18日に「社会保険加入freee」をリリースしました。

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「社会保険加入 freee」利用申し込み専用ページ
https://www.freee.co.jp/

当社でも早速試してみたところ、非常に使いやすいという印象を受けました。ただ、一般のユーザーの方が入力を迷いそうな箇所がいくつかありましたので、社会保険加入freeeという素敵なツールを1社でも多くの事業主さんに利用して頂けるよう、非公式ではございますが、freeeの認定アドバイザーとしてサポートマニュアルを作成させて頂きました。

 

1.会社

 

事業所の名称と代表者

事業主の氏名の欄は、株式会社の場合は代表取締役の名前を記入してください。「代表取締役」という肩書は付けても付けなくても大丈夫です。事業主の住所の欄には、会社の所在地の住所ではなく、代表取締役の自宅の住所を記入してください。

事業主代理人の欄は、原則として「なし」で大丈夫です。役割分担のしっかりしている会社で、社会保険関係の届出は、代表取締役印ではなく、人事担当取締役や人事部長の印で行うという場合に、印を使う人の名前と自宅住所を記入します。なお、「代表取締役印を押した書類を人事部長が年金事務所に代理で持っていく」というような場合は、ここでいう事業主代理人には当たりませんので間違えないようにしてください。

 

事業の種類

プルダウンで選ぶ形になっていますが、社会保険の場合は労災保険のように業種によって保険料の額が変わるわけではなく、一律の保険料率ですので深く考えすぎる必要はありません。自社の業態に最も近いものを選んでいただければ大丈夫です。

複数の業態を営んでいる会社の場合は、主たる事業の業種を選んでください。

 

事業の所在地

内線番号を記入する欄は、内線番号が無い会社は無期入で問題ありません。

事務担当者名は、年金事務所から問い合わせがあった際に実際に対応する方の名前を記入してください。代表取締役が自らバックオフィス業務を行っている場合は代表取締役の名前で大丈夫です。

 

2.給与

 

現物給与と昇給・賞与

昇給月と賞与支払月は、それぞれ4か所ずつ記入できるようになっていますが、決まっていなかったり、不定期の場合は無記入で大丈夫です。

賞与支払月の欄を記入すると、その月が近づくと年金事務所が「賞与支払届」という紙を自動的に送ってくれます。もちろん年金事務所のホームページからダウンロードした紙を使っても良いのですが、年金事務所が送ってくれる「賞与支払届」の用紙にはあらかじめ被保険者の名前等が入力してありますので、事務手続きが簡便になります。ただ、賞与を支払わなかった場合でも、必ず「賞与支払届」に「支払なし」の旨を記入して毎回送り返さなければなりませんので、賞与の支払いが流動的な場合は逆に手間になってしまうかもしれません。ですから、「毎年6月と12月にはほぼ間違いなく賞与を支払う」というような場合以外は、無記入で良いと思います。

給与形態の欄は、会社で支払われている種類の給与全てを選択してください。月給の人と時間給の人が混じっている場合は「月給」「時間給」の両方をチェックし、あるいは、月給制の固定給がベースにあり成果に応じて歩合給が支払われるような給与体系の場合は「月給」「歩合給」の両方をチェックするイメージです。

諸手当の欄は、包括的な記入で構いません。たとえば、主任手当・課長手当・部長手当が支払われる会社の場合は、それらを1個1個書くのではなく、「役付手当」の欄にチェックをすれば大丈夫です。固定残業代を導入している会社も「残業代」の欄にチェックをすれば大丈夫です。

給与計算の締切日と給与支払日は、正社員とパートで分かれているような場合は、正社員についての情報を書いておけば問題ありません。

 

健康保険組合および厚生年金基金の情報

この欄は、基本的には全無視で大丈夫です。通常は新規設立した会社がいきなり健康保険組合や厚生年金基金に加入することはできません。

考えられるケースとしては、大企業がグループ会社や持株会社を新たに設立し、その企業グループがもともと運営していた健康保険組合に、新規設立したグループ会社や持株会社を加入させるというような、特殊な場合のみです。

 

3.従業員

 

従業員の種類と勤務状況

従業員数の欄は、「役員」と「パート・アルバイトを含めた全従業員数」の合計数を記入します。業務委託者は含まれません。その右側の社会保険に加入する従業員数の欄には、左記のうち、社会保険に加入させる予定の役員と従業員の合計数を記入します。全役員・全従業員が加入するのであれば、左右は同じ数字になります。

社会保険に加入しない従業員についての欄は、会社の自己申告になりますが、報酬や所定労働時間数といった労働条件を記入して、社会保険に加入しないことが正当であることを申し立てる欄ということになります。

役員については、原則全員加入ですが「常勤・非常勤にかかわらず役員報酬が0円」または「報酬が出ているが非常勤である」のどちらかに該当する場合は社会保険の加入義務がありません。

なお、常勤か非常勤かは定量的な判断基準はありませんので、社会通念に基づいて一義的には会社が判断することになります。明らかに常勤の人を非常勤にしている場合は、年金事務所の調査で発覚した場合、さかのぼって社会保険に加入させられることもありますので注意してください。常勤か非常勤か迷う場合は、所轄の年金事務所へ相談しましょう。

それと、もう1点注意して頂きたいのは、代表取締役には「非常勤」という概念がないことです。代表取締役の場合は、仕事を部下に任せて週1回しか会社に来なかったとしても、役員報酬が出ているならば必ず社会保険の加入対象となります。

「嘱託・非常勤」「パート」「アルバイト」については、週の所定労働時間が正社員の所定労働時間の4分の3以上かつ月の所定労働日数が正社員の4分の3以上の場合に加入対象となりますので、どちらかが正社員の4分の3未満になっていれば、社会保険の加入義務は無いということです。

書類の記入に当たっては、左側に人数を記入しますが、2名以上の該当者がいて、人によって勤務時間がバラバラの場合は、右側の記入欄には最も代表的なグループのもっとも典型的な勤務シフトに基づいた日数や時間数を記入すれば大丈夫です。深く考えすぎず、大きく外れていなければザックリで問題ありません。

また、「嘱託・非常勤」「パート」「アルバイト」の区別ですが、まず、正社員よりも所定労働時間数が短い人を「パート」にカウントして下さい。次に、正社員と同等の所定労働時間だが1か月や2か月の短期契約のため社会保険に加入しない人や、1日の所定労働時間は正社員と同じだが週3回勤務などのため社会保険に加入しない人を「アルバイト」にカウントして下さい。最後に、「パート」「アルバイト」いずれにも該当しない人や、どこに入れて良いか分からない人を「嘱託・非常勤」に入れてください。

ここまで記入しましたら、この欄の左上の「従業員数」と「(社会保険に加入する従業員数)+(社会保険に加入しない役員+嘱託・非常勤+パート+アルバイト)」の合計がイコールになっているか検算を行ってください。

事業所の所定労働時間の欄は、就業規則や雇用契約書等で定められた正社員の所定労働時間数や所定労働日数を記入してください。月によって所定労働日数バラつきがあったり、変形労働時間制やフレックスタイム制をとっていて1日や1週の所定労働時間数にバラつきがあったりする場合は、おおよその平均値を記入して頂けば大丈夫です。

 

準備する書類

準備する書類については、freeeの案内に従って必要な書類を取り揃えていただけば、問題ありません。

1点だけ補足しますと、実務上よく問題になるのは、バーチャルオフィスや実家の住所などが登記簿上の住所になっている場合です。年金事務所から発送される書類や社員の保険証は、すべて新規適用届に記載した住所宛に発送される形になり、他の発送場所を指定することはできません。

上記のような場合は、実際に事業を営んでいる場所を新規適用届に記載する事業所の住所とし、登記簿謄本とは別に、事業を営んでいる場所の賃貸借契約書を添付するような形にするのが、後々の実務のことを考えると便利ではないかと思います。

 

書類の提出日

この欄は、実際に新規適用届を年金事務所の窓口に持参または事務センターへ郵送する予定の日付を記入してください。未定の場合は空欄にして、後で手書きで追記しても問題ありません。

 

提出

ここまで終了したら、freeeの画面の最下部のボタンを押して、PDFでダウンロードしましょう。それをそのまま印刷して、年金事務所へ持参または事務センターへ郵送してください。なお、郵送の場合は返信用封筒の同封は不要です。

ここで、提出先について補足をしていおきますと、持参する場合は、会社の所在地を管轄する年金事務所の窓口へ提出してください。不明点があり、相談しながら書類を完成させたい場合も窓口持参が良いでしょう。

郵送の場合は、会社の所在地を管轄する年金事務所でも良いのですが、加入手続きの事務処理自体は、各都道府県の「事務センター」で行われていますので、直接事務センターへ郵送したほうが手続にかかる時間は短くなり、保険証も若干早く手元に届くと思います。

各都道府県の事務センターの住所はこちらのリンクをご覧ください。

http://www.nenkin.go.jp/service/kounen/jigyonushi/sonota/20150216.html

最後に、電子申請についての補足ですが、残念ながら、社会保険加入freeeで作成した書類をPDFで添付して申請できるという仕組みではありません。打ち出したPDFを参照しながら、電子申請のインターフェースに打ち込んで頂く形になります。また、電子申請のためには、事業主の電子署名をあらかじめ取得している必要があります。

今後、社会保険加入freeeが直接、厚生労働所のコンピュータにつながるような進化をすれば状況は変わると思いますが、現時点ではプリントアウトしたPDFを事務センターへ郵送するのが最もスムーズであると思います。