社員を1人でも雇ったら就業規則を作成すべき理由
投稿日:2016.02.01|カテゴリー:
労務管理
労働基準法では、社員数10人以上の会社に限り、就業規則の作成を義務付けています。
逆に言えば、社員数10名未満の会社は作成する義務がないということになりますが、社員を1人でも雇用している場合には就業規則を作成するべきだと私は考えています。
その理由は、大きく分けて2つありますので、順に説明をしていきたいと思います。
会社を守るための就業規則
第1は、ルールに基づいた客観性のある労務管理を行い、会社を守るためです。例えば、社員が何らかの病気になり長期間就業できなくなってしまった場合のことを考えてみましょう。
このとき、本人は就労していないので給与を支払う必要はありませんが、社会保険の保険料は毎月発生し続けてしまいます。働いていない人のために毎月数万円もの保険料を拠出するのは、小さな会社にとっては決して軽い負担ではありません。
ですから、経営者としては、心情的にはしのびないものの、回復の可能性が低いならば、なるべく早いタイミングで退職をしてもらいたいと考えざるを得ないのが当然の流れです。
このとき、病欠している社員が理解を示して退職届を書いてくれれば良いのですが、もし、退職を拒否したり、「解雇したら裁判を起こすぞ」と言ってきたりする場合はどうなってしまうのでしょうか。
この点、就業規則が無ければ、最悪の場合、何年もかけて最高裁で判決がでるまで退職させられるかどうかわからない、という結果にもなりかねません。
もし、就業規則を作成し、例えば「欠勤が30日以上続いたら休職とし、2か月休職しても復職できなければ自然退職となる」と定めておけば、この手順に従って、粛々と段階を踏んで退職を求めれば、会社にとってリスクを残すことなく、当該社員に退職をしてもらうことができるのです。
他にも、会社と社員で争いになりやすいのは、勤務成績が良くないので基本給を引き下げる場合や、不祥事を引き起こした社員に懲戒処分をするような場合です。
このような場合にも、会社と社員で客観的に共有できるルールブックとして就業規則が存在すれば、多くの場合、労使間でトラブルになることを回避し、客観的で、社員にとっても納得度の高い労務管理を実現することができるのです。
就業規則あってこその助成金
第2は、助成金を受給できるようにするためにも、就業規則を整備しておきましょうということです。厚生労働省は、社員の雇用促進や職業能力の開発に取り組む会社に対し、様々な助成金を用意しています。
しかしながら、少なからずの助成金は、「就業規則を作成していること」が受給要件の1つとなっています。
たとえば、「契約社員やパート社員を正社員に転換したら50万円が受給できる」というキャリアアップ助成金がありますが、こちらは、正社員への転換は就業規則に定められた手順に基づいて行うこと、というのが条件になっています。
別の助成金を挙げるならば、「正社員を対象に新たな手当や、研修制度、健康管理制度、メンター制度などの福利厚生制度を導入し、その結果離職率が低下したならば最大で100万円が受給できる」という、職場定着支援助成金がありますが、こちらも、列挙した福利厚生制度は、就業規則において定める必要があります。
確かに、就業規則を作成は、社会保険労務士事務所に発注をすると、安くても数万円、平均すると15万円~20万円程度が相場ではないかと思います。
しかしながら、そのコストが助成金の受給で最終的にはお釣りがくるくらいカバーできるわけですし、就業規則の作成は、何も助成金の受給だけが目的ではなく、第1の理由のところで申し上げたように、会社を守るための労務管理のルールを定めるという目的もあることを忘れないでください。
もし、不当解雇やサービス残業でトラブルになったら、会社は何百万円、場合によっては何千万単位のコストを負担しなければならない可能性も出てきます。
そのようなことが万一発生したら、経営にとっては大きな痛手であり、事業の継続自体が困難になる場合もあるでしょう。
以上を踏まえ、会社を守るため、そして使える助成金は積極的に使っていけるようにするため、社員が1人でもいる会社は、是非就業規則を作りましょう、というのが私の持論なのです。