電子タイムカード導入で失敗する3つの理由と対応策

投稿日:2017.10.29|カテゴリー:

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業務の効率化や、正確な勤怠の把握を目指し、電子タイムカードを導入したり、現在導入を検討している会社様は多いと思います。

KING OF TIME、ジョブカン、AKASHI、IEYASUなど、様々な会社から電子タイムカードが提供され、どのソフトを選ぶか選択肢は豊富です。

ところが、会社のニーズに合わせて慎重に選んだはずの電子タイムカードであっても、運用でうまくいっていないケースも少なくないようです。今回は、便利なはずの電子タイムカードで、なぜ運用でつまずいてしまうかの理由を3点説明したいと思います。

 

打刻漏れが生じた場合の対応が大変

第1は、打刻漏れが生じた場合の対応が以外に大変だということです。

従来、エクセルに勤怠を入力していたり、紙の出勤簿に押印をしていたような会社では、日々勤怠を記録する習慣が身に付いておらず、忙しい時などは数日まとめて記入したり押印したり、月末に慌てて出勤簿を作っていたという社員も一定数存在する傾向にあります。

そういったとき、エクセルや紙の出勤簿だと、日報を遡ったり、記憶を思い出したりしながらさかのぼって入力や押印しても出勤簿を作ることは可能ですが、電子タイムカードの場合は、毎日の出勤時と退勤時に、忘れずにカードをかざしたり指紋認証をしたりしないと、電子タイムカードの管理者には大量の打刻漏れの修正作業が発生してしまいます。

さらに言えば、過去の打刻漏れを修正するための操作方法を覚えたりするのもソフトによっては案外大変だったりするので、社内にITが得意な人がいない場合は、打刻漏れの修正だけでも苦戦してしまう恐れがあります。

極端な例ですと、打刻漏れの修正を諦めて、PDFで打ち出した勤怠記録に手書きで打刻漏れの日の勤怠を書き足して、結局手計算をしているという、何のために電子タイムカードを導入したのか分からない状態になってしまっているという会社も存在するようです。

同様に、出張時や直行直帰時などの打刻も、スマホなどのモバイルで打刻ができれば良いのですが、ソフトにそういうシステムが備わっていなかったり、社員がスマホを持っていない場合は、結果的には打刻漏れと同じ状態になってしまいますので、出張や直行直帰の社員が多い会社では、社外での打刻をどうするかルールを決めておかなければ電子タイムカードの運用は上手くいかないでしょう。

 

集計ルールなどの初期設定が大変

第2は、集計時の端数処理などの初期設定が大変だということです。

労働基準法上は問題があるということはあらかじめ申し上げておきますが、実務上の運用として、日々の残業時間を「10分単位」とか「15分単位」とかで丸めている会社様もあると思います。

電子タイムカードを導入する際、こういった「丸め」の設定を会社の勤怠管理のルールに合わせて行うことが初期設定で必要になりますが、これもITにある程度詳しい人がいなければ設定に難儀するかもしれません。

エクセルや紙の出勤簿であれば、記録すべき時間を入力したり記入すれば済むのですが、これも、電子タイムカードでは一筋縄ではいかないところです。

さらに言えば、定時後は10分の休憩をはさんで残業が始まるとか、朝は始業時刻より前に電子タイムカードの打刻をしても特段の事情がなければ早出残業としてカウントされないようにするとか、そういった初期設定もあらかじめ行わなければ、会社が意図した通りの勤怠集計はできません。

勤怠集計に失敗すると、正しい所定労働時間や残業時間を把握することができず、給与計算の担当者が途方にくれてしまったり、助成金を申請している会社の場合は、タイムカードと給与計算の一貫性が無いとして、助成金の審査官から指摘を受けてしまうでしょう。

 

シフト制やフレックスタイム制の設定が大変

第3は、特殊な労働時間制をとっている場合の集計設定が大変ということです。

シフト制、フレックスタイム制、みなし労働時間制など、労働基準法で認められた特殊な労働時間制には様々なものがあります。

たとえば、フレックスタイム制の場合、エクセルで管理をするならば、エクセルに入力された1か月の実労働時間の合計値が、当月の法定労働時間の月単位の枠を超えていないかをチェックすれば良かったわけです。

ところが、電子タイムカードの場合は、フレックスタイム制が適用される社員については、個別の設定をしたりとか、会社全体の所定労働時間が適用されないような設定にしなければ、1日8時間を超えた分を残業にカウントしたり、8時間に満たない日を不就労控除したりと、自動であるがゆえに、望まない勤怠集計がされてしまうのです。

こういった、特殊な労働時間の設定についても、ITに強い人が社内にいなければ、初期設定で苦労してしまう部分です。

 

まとめと対応策

電子タイムカードは、使いこなすことができれば便利な労務管理ツールであることは間違いありません。しかし、打刻漏れの場合の対応の方法や、初期設定のハードルを乗り越えなければ、逆効果になってしまいます。

そうしますと、電子タイムカード導入の際のポイントとしましては、自社で使いやすそうなものを選ぶことはもちろんですが、私は「サポートセンターがしっかりしている会社」の電子タイムカードを選ぶべきだと思っています。最低限、チャットによるサポートは必要です。

多少設定が分からなくても、電話をすればサポートセンターにつながって設定の手助けをしてもらえるならば大いに助かります。ところが、メールでの問い合わせしかできず、メールが帰ってくるまでに何時間も待たされるようですと、使いにくさのストレスになってしまうのです。

そして、顧問の社会保険労務士がいる会社様の場合は、顧問の先生が対応している電子タイムカードを導入すると良いでしょう。場合によっては顧問の先生に相談をしたり、初期設定を手伝ってもらったりすることもできますし、日々の労務管理においてアドバイスをもらうにあたってもスムーズになるはずです。